Introduction
2022年2月10日に東京に降った雪は、筆者にとってこの冬初めて見る雪でした。雪の降ることが少ない南関東で生まれ育った筆者は、雪は人々が寝静まった深夜に積もるものだと、大人になった今でも思っています。 正直に言えば、この日東京の空を覆った寒波は、出発を翌日に控える筆者を少しだけ憂鬱にしたのでした。昨年末から今日まで忙しなく働き続けており、春先まではこの忙しさが続くかも知れない。有難いことに、日常はそんな感じです。疲れが溜まっている身体には、普段にも増して寒さが堪えました。
夜が明けて迎えた2022年2月11日。結局都心に雪が降り積もることは無く、交通機関は通常通り運行していました。眠気眼でSAVOTTAを背負い込み、玄関に鍵を掛けます。いざ家を出てしまえば、重い荷物を担いで歩く身体に冬の冷たい空気が心地よく、思わず空を眺めます。歩道に薄らと残った氷に足を取られながら、筆者は駅へと向かいました。
Gallery
Campsite 看板
奥多摩駅から徒歩5分の街道沿いにある看板。街道を左に逸れながら下っていく坂道の手前にあります。氷川キャンプ場の管理棟は、ここから少し進んだ先。
BBQ小屋
河原へと続く急な坂道の途中にあるBBQ小屋。奥のフェンス沿いからは河原テントサイトを見下ろすことができます。
今回のキャンプ地点
多摩川の水辺から臨む河原テントサイト。相当数のテントを設営できる余裕があります。踏み跡の無い雪の上を、石の硬さを感じながら散歩しました。
Caption
〜Access from Shinjuku〜
“氷川キャンプ場” へは新宿からJR中央線とJR青梅線を乗り継いで約2時間。最寄りの奥多摩駅から氷川キャンプ場までは、歩いてたったの5分です。街道からも近く、車でのアクセスも容易です。
2022.02.11 AM
立川でJR中央線からJR青梅線に乗り換え、奥多摩を目指します。実際に電車に揺られていると、時間はあっという間に過ぎていきます。軍畑駅を過ぎた辺りからでしょうか、多摩川を挟んだ向こうに山肌に雪化粧を施した御嶽山・大岳山・鋸山が姿を現します。思わず座席を移動して車窓からiPhoneのカメラを向けます。何度かトンネルを抜けるその度に、目の前に広がる山の表情が変わります。撮影に夢中になっていると、やがて電車は終点の奥多摩駅に着きました。この記事を書いている最中に漸く「そう言えば……」と思い出したくらい、移動に要する時間は気になりませんでした。
奥多摩駅前の道は、以前ロードバイクに乗っていたときに良く通っていました。けれども、電車で奥多摩を訪れたことはなかったから、とても新鮮な気分で駅舎を出した。駅舎の目の前には、バス停があります。ハイシーズンには、大勢の登山客で賑わうのでしょう。
氷川キャンプ場は、駅近の好立地で格安‼ソロキャンパーのオアシスです‼
氷川キャンプ場は、奥多摩駅から徒歩5分ほど。駅舎を背にしたら、目の前の道を左手方向に進みます。ところどころ白く染まった氷川渓谷の渓相を見下ろしながら昭和橋を越えると直ぐ左手に氷川キャンプ場の看板が見えます。
看板を潜って進むと、直ぐに管理棟があります。利用申込書に必要事項を記入し、料金を払います。河原テントサイトの宿泊プラン(1~5名/1張)の料金は1500円でした。
キャンプ場利用ルールの説明に耳を傾けた後で、足早に河原テントサイトへと続く坂道を下ります。事前に調べた情報通り、なかなかに急な坂道でした。針葉樹とコテージが並ぶ坂道を足を踏ん張りながら下っていくと、河原テントサイトは直ぐです。
雪が上がったばかりの祝日の河原には、意外に多くの方がテントを設営していました。「どこまでがキャンプサイトなのか?」と遠くを見渡します。水道小屋などの施設から離れた遠くの河原には、まだ誰の姿も見えません。何も考えず雪に覆われた河原を進み、初めて見る風景を撮影して歩きます。
河原の先に、赤い橋が見えます。そこまで行って設営場所を確保しようかと悩みながら、暫し真新しい雪に足あとをつけて回ります。誰かの残していった石かまどに雪が積もっているのを見つけ、引き寄せられるようにその傍らにバックパックを下ろしました。
「ただ、ぼうっとしていたい」そんな気分になるシチュエーションでした‼
グランドシートを広げ、腰を落ろします。時刻は午前10時を回ったあたりでした。グランドシート越しに雪の冷たさを感じながら、受付横に置かれていたパンフレットを、仕舞い込んだバックパックのポケットから取り出して眺めます。
“なんにもしない日。”
雪で浮き足立った気分が落ち着きを取り戻すと、無性に珈琲が飲みたくなりました。
息を切らしながら坂道を上り、自販機で缶コーヒーを買ってのんだ後、売店を覗いてみました。写真は撮っていませんが、充実した品揃えです。少し高級なソーセージと薪をひとかご購入しました。キャンプ場の方が「雪で火を熾しづらいだろうから」と細く切った薪を多めにくださいました。そのお陰でスムーズに火を起こすことができました。ありがとうございます。
多摩川から離れた崖沿いは、樹木が傘になって雪が積もっていない場所がありました。丁度、誰かが残していった石かまども残っていました。薪の入ったかごを下ろし、バックパックを担いで移動させます。
平らな断面の石があったので、テーブルにしました。「果たして上手く火を熾せるだろうか?」と不安に思いながら、切り出しナイフを手にフェザースティック作りに精をだします。
湿った地面で日を起こすには、少し工夫が必要です‼
石の上に直接火を熾すのは難しそうだったので、薪を四本並べて土台にしました。以前自作したチャコールクロスに、火打ち石で火花を落とします。薪がよく乾燥していたので、思いの外苦労せずに焚き火を育てることができました。
大きな薪に火を移し終えるころ、頭上の木の枝から落ちる水滴が多くなり始めました。ソーセージを火で炙り、それを囓りながら「この後はどうしようか?」と頭を悩ませます。普通はテントを設営するのでしょうが、その意欲が湧いてこなかったのです。
2022.02.11 PM
筆者がズボンを焚き火にあてて乾かしていると、河原テントサイトにはぽつぽつと他の利用者が集まり始めました。ソロキャンプで、山岳テントを利用している方々が圧倒的に多いようでした。筆者は、パップテントやポンチョテントがソロキャンプの基本だと勝手に思い込んでいたので、少し以外でした。
FATCAMP kitchenのホットワインスパイスで、ホットワインを楽しむ‼
筆者は、普段全くと言って良いほどお酒を口にしません。こんな機会でもないとひとりで楽しくお酒を飲むことはできないでしょう。時刻はまだ13時ですが、興味があって購入しておいた“FATCAMP kitchen”のホットワインスパイスを使ってホットワインを作ることにしました。パッキングされたスパイスをワインに投入し、火に掛けます。難しいことはなにひとつありません。香辛料とフルーツとワインを、一緒に温めるだけで完成です。
“FATCAMP kitchen”からは、ホットワインスパイスの他にカレースパイスも発売されているようです。機会があれば、購入してみたいと思います。
筆者がホットワインを飲み終える頃には、雪の河原テントサイトも大分賑やかになっていました。これから焚き火やランタンの明かりが灯り、幻想的な夜が始まるのでしょう。
さて、薪が雪の欠片のように白く燃え尽きていくさまを眺めながら、この先を考えます。折角の機会なので、敷物と寝袋だけで冬の夜を越してみようかなどという発想も浮かんだのですが、さすがに実行する勇気が湧きません。
「こういう気分に苛まれるの日もあるさ」と割り切って、この日はこれでキャンプサイトを後にすることにしました。
誰かが残してくれた石かまどはそのままにして、灰や燃え残りを片づけます。近いうちにまた遊びに来ようと心に決め、筆者は氷川キャンプ場を後にしました。
雪の中でキャンプ路をする機会は、あまりないかも知れません。けれども、その際には十分な防寒対策を‼
新型コロナの猛威が収まりを見せないまま、時間だけは流れていきます。この冬は“インフルエンザ”という単語を耳にしていない気もします。恐らく、新型コロナの予防対策がそちらでも功を奏したということなのでしょう。
上の写真は、昭和橋から氷川キャンプ場の河原テントサイトを写したものです。日陰になるせいか、雪はまだ溶けずにそのままです。
このエリアは、春から年末に掛けて渓流釣りを楽しむことができます。筆者は渓流釣りのタックルを持っていないのですが、幼いころから釣りが好きで渓流の魚には憧れに近しい思いを抱いています。いつか、渓流釣りとキャンプをまるごと楽しんでみたいものです。
駅の階段を上ると、さすがにここからの景色は朝とは様変わりしていました。1ヶ月前から予約していた日に合わせるように雪が降ったのは、なにかひとつの巡り合わせのようにも思います。不完全燃焼ながら、この日が印象深い一日だったことは間違いありません。
lat / long
35°48’26.8″N 139°05’56.2″E
指定の焚き火場所を確認‼ 耐火養生シートが設置されています‼